「ゴルディロックスと3匹のクマ」(支配星:天秤座)

設定 薄暗い路地に子どもたちが点在している。
徘徊しているようなうつろな目をしている子どもや、荒々しい動きをしている子どももいる。
皆、生きることが仕事…そんな世界。
ゴルディロックスちゃん
(7歳くらいの女の子。中の上暮らしが崩れ貧困層の暮らしを強いられている。)
(小さな声で)
ふざけんじゃないわよ…
あたしが正しいに決まってるのよ。

(普通の声の大きさで澄ました声で)
みんな、ちゃんと頭を使って考えて欲しいわ。
あなたたちには難しいかもしれないけど…

(諭すように)
そんなんじゃ、何も変えられないのよ。

ゴルディロックスちゃんは、いつもそう…
どうしても気取ってしまって、自分が正しいと思うこと以外は許せないのです。
そして、自分の主張が通用しないことが、どうしても理解できないでいるのです。
(間)
大人には、大人の世界があります。
子どもには、子どもの世界があります。
動物には、動物の世界があります。

それに加え、貧富の差によって、力の差によって、さらにそれぞれの世界は細かく分かれているのです。
私たちは、その事実があることを、つい忘れてしまいがちです。

自分の生きる世界を越えて、別の世界に行った時、
正しかったことが、正しくなくなることもある…
当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなくなることもある…

でも、まだ小さいゴルディロックスちゃんが、そのことを理解するのは、難しかったのです。

ゴルディロックス (ちょっと投げやり)
さぁ、みんな行くわよ。

ところが、誰もついて行こうとはしません。
ゴルディロックスちゃんにも、それははじめからわかっていたこと。

思いっきり強がった顔をして、「困ったものね」と言って、走り出しました。
息が切れる寸前まで走ったところで、一度立ち止まり、今度はゆっくり歩き始めます。

行先がない…それが、ゆっくり歩き始めた理由でした。

しばらくして、自分が道に迷っているかもしれない…と考え始め、
少し方向を変えて歩いていくと、木で作られた可愛らしいおうちが見えてきました。
「誰かいるのかしら?」
そうつぶやくと、怖いもの知らずのゴルディロックスちゃんは、そのおうちを目指して、急に走り出しました。

窓から中を覗いてみると、そこには心が躍るような素敵な光景が広がっていました。
ゴルディロックス わぁ…ぁ
玄関に行ってみると、ドアは開いたままです。

部屋の中には、白い湯気の立つ美味しそうなスープが3つ。

ゴルディロックス わぁ~美味しそう!
テーブルに駆け寄り、手を伸ばし、お皿を取ろうとすると、

大きいスープは、重すぎた。
中くらいのは、熱すぎた。
だから、
小さいスープが、お気に入り。

椅子に座っていただきましょう…
そうささやいて、今度は椅子に近づいた…

大きい椅子は、高すぎた
中くらいのは、落ち着かない。
だから、
小さい椅子が、お気に入り。
お気に入りの小さい椅子に揺られながら、お気に入りの小さなスープを反り返るほどに飲み干すと、
椅子の背もたれが、急にボキッと折れてしまった…あぁ、大変!と思ったけれど、
そのままにして、隣の部屋へ。

そこにも、やっぱり3つある。

大きいベッドは、登れない。
中くらいのは、広すぎる。
だから、
小さいベッドが、お気に入り。

ふわふわ、ぬくぬく、心地よい…
ずーっと、こうしていたいかも…

あっという間に眠くなり、いつしかほんとの夢の中…
ゴルディロックスちゃんは、夢の中。

夢の中では、裁判の女神アフロデューテが待っていました。

アフロデューテ 私は、アフロデューテ。
ゴルディロックス。
あなたのしたことは、正しいことではありません。
あなたは、そこのことを、心から恥じなければなりませんよ。
(少し長い間)
コルディロックスちゃんは、まだ夢の中ですが、
さあ、大変!
クマたちが帰ってきたようです。
子グマ あーっ!
ぼくのスープがない!
あっ、あっ、あーっ、ぼくの椅子が壊れてる!

えーっ!
ダメ!ダメ!ダメ!

ぼくのベッドォー!

きみが犯人だね。起きろーっ(怖く言わない)

ゴルディロックス えっ! はっ! クッ、クマ!

ゴルディロックスちゃんは、もうビックリ。
このクマたちに食べられてしまうかもしれない…と思ったら、怖くてとても動くことができません。

そんなゴルディロックスちゃんに、子グマは強い口調で言いました。

子グマ なんで、こんなことしたのさ。
きみの、いや人間の世界ではしてもいいことなの?
ほくたちの世界では、黙っておうちに入ることも、スープを飲むことも、椅子を壊してそのままにすることも、ベッドで寝てしまうことも…全部してはいけないことなんだ。
でも、ゴルディロックスちゃんは、
子グマの話なんか聞いている場合ではありません。
この恐怖から逃れたい一心。
ゴルディロックスちゃんは、大急ぎで逃げだしました。
子グマ 待って!…待ってよ…
逃げることもさ、きっと間違っていると思うよぉー。
(少し間)
ゴルディロックスちゃんがしたことは、どんな時だって、決して許されることではありません。
でも、彼女が生きる世界では、悲しくも、日常行われている行為なのかもしれません。

ただ責めるだけでは解決できないことを、「世界」は、たくさん抱えています。

だから…
私たちが大切にしなければならないことがあると思うのです。

それは相手の立場に立ってみる…ということ。

たとえ、
住む世界が違っても、
まったく違うルールの中で生きていたとしても、
相手を思いやる気持ちが失われなければ…
そこには、解決の糸口がある。

裁判の女神アフロデューテが、私たちを、その解決の糸口へと、導いてくれているのです。

そして、
心の正義を育み、
私たちを正しくするために、
この地球に降り立ち、
理性と知性のバランスを整えようとしているのです。

品格を損なわず
言葉をおとしめず
感性に優しさと美しさを招き入れ
誰かをいつも愛おしむ

誰もが、時の架け橋となりゆくために。