「長靴を履いた猫」(支配星:水星)

猫はお気楽。ご主人は無言で景色を一通り眺め歩く。
ご主人様っ^^
もしかして…ガッカリしていらっしゃますよね。
それも、よくわかりますよ。
遺産が…この私め 「猫」一匹なんですからね。
ご主人様 そんなことないよ。
(ため息)
でも、まあ、少しだけ救われている気もしてるのさ。
お前は、猫としてはちょっとだけ賢い…
いや…確信はないが、そんな気がしているんだよ。
それは、以前から、この猫には何となく感心することが多く、家の役にも立っていたような印象だったからです。でも、大した根拠はありませんでした。
(猫は心の中でつぶやき。つぶやきらしく。)
その程度か…でも、まっ、お任せを…
(本当は嬉しかったのです。)
(間)
ご主人様!
この私(わたくし)、ご主人様のために知恵を遣います!
私に、粉の大きな袋と長靴をください。
なんと、猫は、それをくれたら、自分はご主人様を必ず幸せにできるというのです。
ご主人様は半信半疑でしたが、それらを準備してやりました。
(少し長い間)
猫は、さっそく作戦を決行しました。
まず、袋に追い込んでめずらしい獲物を仕留めては、数か月に渡り、国王に献上し続けました。
その時、猫は必ずこの一言を言いました。
「カラバ侯爵様から国王様への贈り物です。」
国王の脳裏に「カラバ侯爵」という名をしっかり刻むことが目的でした。
しかし、これは、序の口…

さぁ、始まりますよ!

ご主人様。
服を脱いで、川で水浴びをしてください。
ご主人様は、猫の言う通りにしました。
そこへ、国王と美しい王女を乗せた馬車が通りかかりました。
猫は、馬車に駆け寄り…
国王様、助けてください!
カラバ侯爵様が、川に投げ込まれておぼれています。盗賊に襲われ、すべてをはぎ取られてしまいましたぁー(↘)。
国王 「カラバ侯爵…? そのお方は!確か…貢物の…!」

「皆の者、カラバ侯爵様を直ちに救い出せ!」
「そして、誰か!城へ!我が服の中の最高のものを持ってくるのだ。はっ、はっ、早くせい!」

そうです!何度も繰り返し聞いた「カラバ侯爵」の名。
たくさんの珍しい貢物を献上してくれたカラバ侯爵。
助けないわけがありません。

ご主人様は、川から助けられ、立派な服を着せてもらうと、もともと美しい顔立ちであったから、なんと見栄えのすること…
疑う余地などまったくない立派な青年侯爵になりました。
そして、その美しく立派なカラバ侯爵を見た王女は、すぐに魅せられてしまったのです。

そう、猫は、わかっていたのです。ご主人様が、美しい顔立ちであることを。まさに、妙案でした。
そして、思った通り。
外見は、完全なるカラバ侯爵が出来上がったというわけです。

猫の作戦は、さらに続きます。
猫には、外見の次に、もう一つ、ご主人様のために手に入れなければならないものがありました。

それは、カラバ侯爵にふさわしい財産。

そこで、猫が取った作戦は、広大な土地がすべて、カラバ侯爵のものであると、民衆を脅して証言させるというものでした。

でも、こんな嘘はすぐにバレてしまいます…
(間)
広大な土地の持ち主、それは、なんと鬼。

でも、ご安心を。猫は、ちゃんと奥の手を考えていたのです。

猫は、国王、王女、カラバ侯爵を乗せた馬車よりも先回りして、鬼の住む城へと向かい、さっそく変身の得意な鬼と知恵比べを始めます。

いやぁー、あなたが、大きな動物や恐ろしいものに変身した時は、あまりの凄さに腰が抜けてしまいそうでしたよ。
あなたは、本当にすごい力の持ち主ですね。
でも、小さな動物にはなれないですよね。ネズミとか…
何をいってるんだい!
私にできないことなど、あるわけがないじゃないか!
鬼は、すぐにネズミに姿を変えました。
猫は、その一瞬を逃さず、あっと言う間に、ネズミを食べてしまいました。
(間)
そして、鬼は、この世からいなくなりました。
※春爛漫の音楽になってから

これで、鬼のお城も財産もすべて「カラバ侯爵様のもの」
こうして、カラバ侯爵の名にふさわしい財産を手に入れ、ご主人様は、その日のうちに王女と結婚することとなりました。

(つぶやき)
ご主人様。あっ、いや、カラバ侯爵様。
立派な外見と財産、そして美しい王女との結婚、お気に召しましたでしょうか?
私(わたくし)のできることは、ここまででございます。
この先、どう活かすかは…カラバ侯爵様、あなた様次第でいらっしゃいますよ!
猫が、最後の仕上げに、わざわざこんなことをつぶやいたのは、ご主人様に魔法をかけたかったのかもしれません。
ご主人様が、幸せを見失わないように。

私たちの中には、形にすることのできない、忘れてはならない大切なものが存在しています。

「心と能力」
代わりを果たせるものはありません。

猫は、言います。

あなたは、私を信じてくださった。
だから、あなた様のために、私は(わたくし)は、私(わたくし)の知恵と能力を最大限に発揮することができました。

猫の知恵は、きっと愛の証…