「眠れる森の美女」(支配星:蠍座)

まもなく、100年の時を封じた呪いが解かれようとしている。
(間)
茨で覆い尽くされた森の入り口に、姿を見せたのは、勇敢な精神と正義に溢れた隣国の王子でした。
王子は、強い使命感をもってここへ来ました。
この森の奥にある城で、100年もの間、妖精の呪いによって眠りについているお姫様を救い出すために…。
お姫様は、天蓋(てんがい)で覆われたベッドに横たわり、そのまま時が過ぎていくのを待っていました。
その眠る面(おもて)は、雪のように白く、氷のように静かな輝きを秘めた、本当に美しいものでした。

眠りの中であっても、この100年に起きたことを、お姫様はすべて知っていました。
いつも、茨の森に住む動物たちが、代わる代わる外の様子を知らせに来てくれていたからです。
そして、心までもが眠っていたわけではなかったからです。
自分を救い出そうと、蔽い(おおい)茂った茨と格闘し、鋭い茨のトゲが刺さり、死んでいった若者たちが、たくさんいたことも知っていました。
それだけではありません。
自分がなぜ100年の眠りに就くことになってしまったのか…そのことも動物たちから聞いて知っていました。

お姫様(15歳)
静か穏やかに話す。(寝てるので、ずっと静か穏やか)
「あら、誰かきてくれたのね。今日来てくれた森のお友だちは誰かしら?」

ネズミ
元気すぎない。
「ボクだよ。ネズミ。今日はさぁ、大ニュースがあるよ。」

お姫様 「何かしら?」
ネズミ 「また、若者が一人、茨の森の入り口に立ってる。」
お姫様 「まあ、それは大変!茨のトゲが刺さって、また森に飲み込まれてしまう…ネズミさん、救って差し上げることはできない?」
ネズミ 「(小さく溜息)…運命の呪いはどうすることもできないんだ…。決まっていることが起こるだけ。
あっ!でも悪いことばかりとは限らない。
いいことも起きる!」
お姫様 「いいこと…そう…じゃあ、ちょっと記憶の中を探して来るわ。」
すべては、あの日から始まったのです。
お姫様の洗礼式の後の一大パーティ…
王様は、お姫様を幸運な人生へと導いてもらおうと、国中を探し回り、この国に住む7人の妖精を招きました。
お姫様が素晴らしい王女へと成長するために、7人の妖精たちには、お姫様に必要なものを、一人一つずつ贈ることになっていました。

だから、妖精たちは特別な存在…

最初の妖精は、最高の美しさを
2番目の妖精は、最高の賢さを
3番目の妖精は、最高の気品を
4番目の妖精は、最高の優しさを
5番目の妖精は、最高の富を

6番目の妖精は、最高の時を それぞれ贈りました。

そして、
7番目の妖精が贈り物をしようとした時です。

会場の大きな扉が開き、ゆっくりと一人の老婆が入って来ました。
実は、妖精は7人ではなかったのです。

老婆は、不気味な雰囲気を醸し出しながら、お姫様へと近づいて行きました。

そして、足を止めると…

老婆の妖精
下品ではない
「私に招待がなかったことを許せると思うのかい?」
「招かれざる客がどんな贈り物をするか…皆知りたいだろう?」
(チロチロと左右を見渡すと…)
「私の贈り物は、飛び切りの力を発揮する素晴らしい贈り物だよ。この美しい姫が15歳になった時、
紡錘(つむ)の針で指を刺して死ぬ運命を授けて差し上げた…皆でその日を待つがよい。」
この突然の恐ろしい贈り物に、誰もが嘆き悲しみ、困惑しました。
なぜなら、妖精の贈り物は、「絶対の運命」だからです。
(少し間)
その時、7番目の妖精が言いました。
7番目の妖精
25歳 大人可愛い感じ
「皆様、大丈夫です。私はまだ贈り物を差し上げていません。

お姫様は15歳になった時、死んだりいたしません。
私の若い魔力では、紡錘(つむ)の針で指を刺してしまうことはないのですが、私からは100年の眠りにつくという運命を、お姫様に差し上げました。」

こうして、お姫様は、15歳になった時、運命に連れられ100年の眠りへと引き込まれていったのです。
(少し間)
そして、今…
(間)
お姫様 「ネズミさん、私の記憶では、100年経った時、私の眼を覚まさせてくれる勇敢なお方が、私のもとへ来てくださることになっていたわ。その方だけは、茨の森を抜けられるはず…」
ネズミ 「じゃあ、もし今100年経っていたとしたら…あの若者…」
(間)
あれ!あっ!お姫様、そろそろ、その時が来たんじゃないかな。」
足音が聴こえます。
足音は、この塔の階段を上がって来ています。
(コツコツコツコツ…)
お姫様 「あの茨の森の蔽い(おおい)は、解かれたのね…もうすぐ、迎えに来てくださるのね。」
その足音が近づいてくるに従って、
お姫様の美しい面(おもて)は、ますます美しさを増し、紅を注したような底知れぬ華やかさに包まれていきました。

そして、足音が部屋の前で止まると、
低く軋んだ(きしんだ)音を携えて、扉が静かに開けられました。

王子の息づかいが、お姫様の頬を伝い、二人の息づかいは、お互いが待ち望んでいたことを告げるかように、重なり交わっていきました。
二人の愛が生まれ出ずる時…その瞬間を迎えたのです。
お姫様の瞳には、ハッキリと王子の姿が映し出されました。

こうして、100年の眠りの呪いは解かれ、お姫様は愛のベールに包まれ、王子とともに塔を降りてゆきました。
(少し間)
二人の愛の始まりです。

愛の中で眠っている記憶。
時が背中を押すと、
記憶は愛を連れて現実世界に現れる。

底知れぬ果てから、
創り出される愛は、
私たちの心の魔力で、
その姿を変えていく。

あなたが、
愛とともに深く、絆を紡ぎながら生きられるように…