対象は保護者だけに限りませんが、学校では年に三~四回程度、見学ができる日が設けられています。現状としては、保護者や祖父母、就学前の子どもを持つ親、地域支援者、教育委員会などが、主な来校者です。

こうした行事が学校公開も兼ねて行われることが多いのは、子どもたちの学習や活動の様子に加え、教育環境の整備状況などを第三者の目で観てもらうことを目的として公開しています。また、イベント性の高い音楽会や運動会などとは異なり、限りなく日常に近い状況を確認することができる機会です。ただし、あくまでも「限りなく」であることは、理解しておきたい点です。

保護者にとっては、通常の授業参観と学校公開との差異はそれほどなく、目的はどちらも、わが子の学校での様子を参観することでしょう。しかし、どのような視点で参観すべきかということについて、明確に答えられる保護者はいないように見受けられます。参観の仕方について、私たちは学ぶ必要はないでしょうか。

その日、その時間の授業が、どのようなテーマで、どのようなねらいと成果を求めるものなのかということは、配布されるプリントなどでも知らされますが、子どもたちの成長を観るためのポイントは、明確には示されていません。子どもたちが年齢に応じて成長しているかを知ることも含めて、私たち自身が参観の仕方を整理することによって、冷静な判断を導き出すことができるようになるはずです。

何より大切なことは、「課題」を見つけ、自分は「保護者として何をすべきか」という視点を持って参観に行くということです。そして、気づいた課題をどのように解決に導いていくか、という段階に進んでいきましょう。

また、クラスや学年ごとに参観のポイントを保護者と教員が共通認識として持つことができれば、子どもたちの見守り方や、問題解決のための協議や懇談の機会を発展的に生かせるようになるのではないかと考えます。

 

事前準備

事前に、わが子が今現在、どのような条件で学校生活を送っているのかという点を見つめ直しておきましょう。

 

① 子どもの年齢と成長過程を理解しておく

一学年違うだけで、子どもはずいぶん大きく変化します。何かのきっかけによっても、まったく違う考え方になることがあります。「この子はこういう子だ」という固定観念で判断しないことが大切です。

 

② 子どもがどのような気持ちで学校に通っているのかを知っておく

子どもも大人と同じで、毎日楽しいことばかりではありませんし、体調によっては楽しめない日もあります。それでも、尋ねると、「楽しい」と答えることがあります。それは、親への気づかいや、本人の性格的なものなどから、「全体としては、まあ楽しい」ということなのでしょう。

ですから、「楽しい」という答えの中に混在している不安の種は、小さくても見つけておきたいものです。「学校は楽しい?」とストレートに質問するのではなく、子どもの様子や会話の中から感じ取り、一緒に考えられる時間を持つことができればよいと思います。

そして、不安の種を見つけても、子どもが置かれている状況を軌道修正しなければ、と自分自身を追い込むのではなく、子どもの心を抱きしめることから始めましょう。そうすれば、子ども自身はどうしたいのかが見えてくるはずです。

 

③ 気になる点を整理しておく

日頃から、子どもの変化や様子、学習の進め方、教員の指導内容など、些細なことでも構わないので、メモにしておくとよいと思います。書き留めてみると、参観において、自分がどんなところを観てこなければならないのかが分かってきます。こうして視点を定めておくと、課題や改善策も見つかる可能性が高まります。

 

参観日当日

参観に向けて準備してきたこと、考えてきたことをもとに参観します。

①クラスの雰囲気を捉える

よく私たちは「静かなクラス」「騒がしいクラス」というようにクラスの印象を言葉で表現します。実際に参観すると、その都度印象が変わることもあるでしょう。印象と特別意気込まなくても、自然に感じられるものですから、難しいことと捉えず、私たちがクラスに入った時の印象を自分自身の心に留めておきましょう。改善しなければならない問題が生じた場合や、クラス全員がまとまって活動する場合など、考えをまとめたり方策を選択していくのに役立つ情報になります。

②指導中の教員と子どもたちとの関係を観る

私たちが教員と接する機会は、担任とでも、特別な事情がない限り、そう多くはありません。個人情報保護法の施行により、教員のプライバシーに関しても、ご自身が話されたこと以外は、なかなか知ることができないのが実情です。教壇に立つ教員の姿から、どれほどその教員のことを理解できるでしょうか。直接接する機会も限られてはいるのですが、理解し合えるチャンスを見つけることはできます。

③教室の環境が整備されているかを観る

教室というのは、そこに存在する人びとの人間模様を映し出します。つまり、教室を見渡すことによって、子どもたちの学校生活や担任教員の性格、指導力も推察することができるので、子どもたちの教育環境を教育環境を評価する十分な判断材料としても非常に有効であると言えます。

 

④子どもたちの様子を観察する

子どもたちの活気あふれる様子や、好奇心いっぱいの瞳に出会えたら……学校を訪れる時はいつも、そう期待します。

一人ずつを、よく観てみてください。どの子どもにも、どんな子どもにも、小さな輝きを放つ瞬間があります。「輝き=反応する」という考え方をしてみてください。趣味や関心がなければ、反応はしないはずです。クラスが、どんな子どもたちで構成されているのかを見つける、よい材料になります。

⑤自分の子どもの様子を観察する

クラスの中で自分の子どもはどのように過ごしているだろうか……仲良くできているだろうか、授業中は真面目にしているだろうか、忘れ物はしていないだろうかなど、私たちは、いろいろなことが気になります。ですから、この点は、書き留めやすいはずです。

ただ、それだけではなく、子どもたちの学習や活動、そして教室でのわが子の様子を総合的に観察し、状況をきちんと把握しましょう。そうすることが子どもの支援に繋がり、参観の場が保護者にとって学習の機会にも変わります。

⑥保護者の様子を観察する

私たち自身も保護者なので、難しいかもしれませんが、少し距離をおいたスタンスを取って「保護者」を観察してみると、途端にいろいろなことが見えてきます。

例えば、保護者はいかによくしゃべっているか、教室でも保護者同士でしゃべっている、廊下が社交場になっている、数人で固まって行動している、参観中にわが子に手を振ったり、合図を送ったり、話しかけたりしている……。「皆やっているから」ということで、あまり気にならないのかもしれませんが、一度、評論家になったつもりで周囲を眺めえてみるとよいと思います。意外と気になる行為が、たくさんあることに気づくでしょう。

⑦自分なりに感じたことを書き留める

参観中に気になったことを書き留める習慣はありますか?「参観集で書き留める?……」「そこまでしなくたって……」「なかなかできないのよ……」と思っている方も多いかもしれません。

なぜ、書き留めることをお勧めするのかというと、理由は二つあります。一つは、忘れてしまわないように。もう一つは、感情的な対応や処理をしないためにです。どんな簡単なメモでも構いません。キー・ワードとなる単語一つでもいいのです。必ず、考えるための情報と時間を与えてくれるはずです。

 

■おさらい

参観が済んだ後は、参観で得た情報を子育てにどのように活かすか、を考えます。

①参観メモに書き足す

参観で書き取ったメモを確認します。時間をおいて確認すると、書き加えたいことや、さらに思いつくことがあったら、ぜひ、メモに書き足してみてください。

書き足していくことによって、自然と解決策が見えてくることもあります。自分で自分を励ます言葉にめぐり合えることもあります。しかし、逆に、自分を追い込んでいくこともありますが、そこには課題が見えてくるはずです。

メモに書き足していく行為は、自分自身の心の状態を知る道筋でもあります。今、自分は心の安定を図ることができているのか、人の力を必要としなければならない問題を抱えているのかなどを知ることによって、子どもに対して、感情的にならずに対応できるかどうかを確認する助けとなります。

②見えてきた問題の重要度を考える

言葉にすると同じ表現であっても、そこに含まれている問題は、さまざまな状況や影響によって大きく異なります。

例えば、「騒いでいた」という行為が見られた場合、まず、それが迷惑な行為だったかどうかということが、いちばん注目しなければならない点です。授業を妨害したり、人を傷つける危険性があったりという状況だったのであれば、これは大問題だということになります。

しかし、次のような場合はどうでしょう。子どもの授業態度はとても静かで、一見何の問題もないように見えました。これは、うちの子には特に問題はなさそうという判断をしてしまいがちな様子の一つでしょう。ところが、よく見ているとその視線は、人を見ていないように見えました。そこには、いろいろな問題が想像できます。担任教員に対しての信頼感がないのかもしれません。クラスの中で友人がいないのかもしれません。授業についていけないのかもしれません。他人に迷惑をかけているわけではないからと見過ごすのではなく、問題を探る必要があると判断して対応することが望ましいと思います。子どもの表情や態度の異変を見逃さないためにも、参観で得た情報は、自分の目で観て、耳で聞いた確かなものですから、子どもとの関わりに十分に活かすようにしていきましょう。

③必ず子どもとの会話を持つ

子どもとの会話を持てるかどうかは、とても重要なポイントです。最近の子どもたちは習い事や塾に通っている場合が多く、学校から帰宅しても、のんびりと時間を過ごすというような生活ではなくなっています。その、大人顔負けの多忙な生活を子どもたちが送ることができるようにするのを優先するあまり、私たちは多少のことは大目に見て特に問題視せず、または一方的に注意を促すだけでやり過ごしてはいないでしょうか。また、自分自身の多忙から、子どもたちにしわ寄せが来ているということはないでしょうか。

人間形成は、小さな出来事の積み重ねによるものです。ぜひ、ふだんから子どもとの会話を心がけ、気になったことはきちんと話す習慣を身につけるようにしたいものです。

④子どもと話すポイントを整理する

子どもと話をする際、気を付けたいことがあります。嫌な話をしつこく、繰り返ししないことと、「親」という権力で押さえつけないことです。

親の力で子どもを押さえつけるのは簡単ですが、その反動は沸々と大きくなっていきます。押さえつけてしまうのではなく、子どもが理解しやすく納得できるように話を進めていくことが重要です。

そのためには、子どもと話をする前に、話す内容を整理し、消化しておく必要があります。子どもが親の意に反するような話をしたとしても大概のことは受け止められる懐の大きさを持っていたいものです。

⑤学校と家庭の役割

参観の状況や、自分自身で整理した内容、そして、子どもとの会話も含め、確認することができた課題や問題を、どのように解決していくかということを考えるのが、次の段階です。

学校はすべてを教えてくれるところ、という勘違いが保護者の中にあります。しかし、先にも述べましたが、学校は、子どもが集団の一員として習得すべきことを実践から学ぶところですから、学校にすべてを依存すべきではありません。

集団生活に適応できる力を養うのは、学校ではなく家庭です。適応力が身についていない子どもが、集団の中で生活することは困難です。ですから、家庭での教育は怠ってはならないのです。

家庭と学校は、それぞれに役割があって、分担すべき範囲が異なることを十分に理解して対応していきましょう。