個人面談は、学期に一回程度、さらに希望があれば、その都度実施されていると思います。昨今、家庭訪問が実施されない学校もあって、教員にとっても個人面談は、家庭環境を知るためには有効な機会であると推測します。

しかし、限られた時間で実施しなければならいので、なかなか有意義に活用するのは困難であることも事実でしょう。それでも、教員は、子どもたち一人ひとりの日々の生活や学習の様子などを記録し、保護者に理解できるように伝達したいという思いで準備をしています。ですから、たとえ限られた時間であっても、教員から伝えられた内容を受け止め、課題の解決、今後の対応などを導き出すことができるのが理想です。

個人面談も、保護者会や懇談会と同様、教員と保護者の協働によって成立するものですから、保護者の個に教員への依存意識が強いと、何も得ることができず、タイムオーバーとなってしまいます。

限られた時間を有効に活用するためには、やはり事前の準備がものを言います。面談時間を三分の一ずつに分け、①教員からの報告・質問、②保護者からの報告・質問、③今後の対応・協議、と配分するとよいでしょう。そして、以下のようなことについて、整理してメモにしておきましょう。

 

■日頃から心がけておきたいこと

①家庭における子どもの様子

子どもの背勝習慣や家庭のルールに対する意識、家庭との関わりなどについて見つめ直してみると、課題も分かりやすくなります。また、ふだん子どもと接していて、その行動や発言の真意がどこにあるのか測りかねる点や、「どうして、そうなるの?」「どうして、できないの?」など、私たちが子どもに感じていることも記憶しておくとよいと思います。家庭には、人には話せない問題を抱えていることも、少なくありません。その場合、具体的に相談しなくても、自分自身が抱えている問題との関連性を考えておくだけで、面談での話は実りのあるものになっていきます。

 

②最近気になっていること

保護者自身が最近、気になっているわが子の変化は、面談に当たる教員にとっては貴重な情報です。子どもたちは、小さな反抗期や倦怠期を繰り返しながら成長しています。問題の大きさや深さは、大人と比較できるものではありませんが、心のダメージという意味では、一人の人間として受けたものに変わりはなく、感情は大人と同じように揺れ動きます。

問題には時間をかければ一人で解決できるものと、どんなに時間をかけても一人では解決できそうにないものがあります。子どもの感情の動きを感じ取り、そこからどのように手を差し伸べるのかを考えることが、保護者である私たちの責務です。

結果を急ぐことはありません。子どもの様子に心を寄せてみること。それだけで、子どもの心が癒されることもあります。

子どもが発した気になる一言、態度の変化、どんな些細なことでも、気になっていることを書き留めておくことによって、子どもの変化が、私たちの心に留まるようになります。

 

③子どもをどのように導いていきたいか

わが子はこんなふうに育ってほしい―個人面談の前には、思い出してみてください。どんな問題や心配を抱えていても、私たちには、少なからず子どもに対する期待、希望があります。「健康に」「思いやりがある人に」「人徳のある人に」「立派な人に」など、さまざまであると思います。

さらに、それ以上にさまざまなのは、希望が叶うまでの過程です。例えば、一口に「健康」と言っても、食の安全を重視してほしいと願って育てる人もいれば、スポーツに力を注いでいけるように育てている人もいるでしょう。そして、そこには、たとえ勉強ができなくても健康でさえあればとか、勉強と両立してこそとか、人とのコミュニケーションが取れてこその健康とか、いろいろな条件が付け加えられていくはずです。子どもに不自由はさせたくないと考えれば考えるほど、条件は複雑になっていくのかもしれません。

そこで大切なのは、子どもが迷わず進むべき方向に向かって歩いていけるように支援することです。大地にしっかりと根を下ろし、揺らぐことのない幹を持った木々は、枝葉を健やかに成長させ、幹はさらに太く、上へと伸びていきます。根幹が揺るぎさえしなければ、枝葉をしっかりと支えることができるのです。

子どもをどのように導いていきたいのか―初心を忘れるべからずです。どんな時も、子どもへの願いは何であったかを思い返しながら、次の一歩を踏み出す。そんな気持ちで個人面談に臨むことができれば、教員からの助言や提案も、非常に建設的かつ冷静に捉えられるようになると思います。

 

④質問事項は優先順位を付けておく

個人面談は、保護者が自分の迷いや質問、問題を確認し、解決したい時間のはずです。保護者・教員の双方が考えながら言葉を重ねていくことができれば、相互の理解を深めながら、一緒に糸口を掴む方向を作り出すことが可能となります。

唐突に思いついたように言葉を発しても、決して改善の回答は得られません。担任や教員に質問しなければならないことは何なのかを、まず事前に考えてみることから始めましょう。

面談中は、短い時間の中で、質問や伝達したいことの内容に加え、その背景と経過も伝えなければなりません。さらに、保護者としての思いを伝えることも重要なポイントです。これだけの情報を教員に提供しなければならないわけですから、その場の思いつきで進めていくのは非常に無謀であることがお分かりになるでしょう。

自分の考えや現状を見つめるためにも、事前に話したい内容を書き出し、整理をして優先順位を付けておくことは、有効な手段であると考えます。自分のメモですから、格好をつける必要はありません。自分が分かるように書けばよいので、ぜひ実行してみていただあきたいと思います。

 

個人面談の締めくくりでは、私たち保護者も教員も、「そうですねえ」「分かりました」という言葉を発し、終わってしまうことが多いのではないでしょうか。その言葉が、どんな意味合いで言われたのか、それはとても重要なことです。

その言葉が「同意」を示す言葉であったならば、この個人面談は大収穫かもしれません。そこで、もう一度、自分自身に問いかけてみてください。「私に与えられた宿題は何か。先生が抱えてくれた責任と、私たち保護者に示してくれた責任は何か」ということを。

逆に、意味を含まない、単に区切る言葉として使われた「分かりました」であったとしたら、この個人面談は特に成果がなかったということです。

満足のいく時間でなかった場合は、後日改めて時間を設定してもらえるようにお願いする勇気も必要です。保護者と担任や教員が同じ方向を向いて指導できない状態、一貫性がない状態は、子どもたちに迷いと不安をもたらす一番の原因になります。担任や教員と同じ方向を向いて前進していけるように、保護者としては、力を発揮する場面の一つとして、個人面談を有意義なものにしていきましょう。

 

ここまで、多くの学校で実施されているであろう代表的な学校行事を通して、保護者としてどのように関わればいいのかということを提案してきました。

一つひとつの学校行事に、こんなにも意識を持って参加しなければならないものかと、少しうんざりなさった方もいらっしゃるかもしれません。考えることがあまりに多くて難しいと感じられたかもしれません。あるいは、日々の生活があるから、そんなところまで気が回るはずがないという感想を抱いていらっしゃるかもしれません。

確かに、口で言うのは簡単ですが、実行することは大変なことです。しかし、私たちの子育てを振り返ってみてください。私たち大人は、子どもたちに「いつでも」実行することを求めています。そして、それができないと、「やることをやりなさい」「なぜ、できないの」「情けない」「あなたのために言ってるのよ」……といった言葉でせめてしまっていることはありませんか。

子どもたちにとって実行することは、そのほとんどが未経験のことであり、挑戦の連続でしょう。同じ実行と言っても、さまざまな経験の蓄積を持った大人の負担とは、比較にならないほど大変なものだと思います。私たちは、子どもたちが常に実行を求められている状況で生活していることを考えれば、自分自身にも厳しくなる必要があるのではないかと思うのです。

子どもを成長させるということは、私たち自身が子どもたちの生きる教育社会で通用する「保護者」として学び、その義務を遂行できる力を、身に付けなくてはならないということなのです。